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(公財)兵庫県予防医学協会副会長・健康ライフプラザ健診センター長。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。平田結喜緒先生ひらたゆきお■そもそも肝臓って、どんな臓器?肝臓は脳に次いで大きな臓器で、成人男性で1.0〜1.5kgほどの重さがあります。主な機能は、血液によって肝臓に運ばれてくる様々な物質の代謝・解毒・貯蔵や、コレステロール・胆汁などの合成です。飢えに備えたり、毒成分から身体を守ったりと重要な役割を果たしていますが、沈黙の臓器」と呼ばれることがあるように、状態が悪くなってもすぐに症状が出ることはありません。現代のような飽食社会で食べ過ぎや飲み過ぎが続くと、肝臓に過度な負担がかかり脂肪肝などの疾患につながってしまうため、注意が必要です。昔から重要なことを「肝心(腎)」と言いますが、その言葉のとおり、肝臓はとても重要な臓器ですから大切に守りましょう。COLUMN教えてくれるのは■「NAFLD/NASH」から「MASLD/MASH」へ名前が変わる!?本稿では、非アルコール性の脂肪肝を「NAFLD」NASH」という用語で説明をしてきましたが、これらの名称に含まれる「alcoholic(アルコール性)」や「fatty太った)」といった言葉が不適切で、病気の性質を正しく表現していないという考えから、2023年欧米や日本肝臓学会でそれぞれ「MASLD」「MASH」という名称に変更することが決まりました。「MASLD」とは、Metabolicdysfunction-AssociatedSteatoticLiverDiseaseの略で、代謝機能障害に関連した脂肪性肝疾患」という意味です。■ALT値で肝臓のシグナルに気づこう!「奈良宣言2023」日本肝臓学会では2023年6月、肝臓病の早期発見・早期治療を目指す「奈良宣言2023」を発表しました。肝機能は、肝機能検査の結果や体重、飲酒習慣などから総合的に判断されますが、奈良宣言2023」では、血液検査で広く測定されているALT値が30を超えている場合、他の値が正常範囲でも慢性肝臓病(CLD)を疑って検査などを行うことを推奨しています。沈黙の臓器」の小さな声にいち早く気づくために、ALT値をチェックして、30を超えたら、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。普段の生活に取り入れられる予防策はありますか?NAFLDは肥満が大きなリスク要因であり、予防策はやはり食事と運動といった生活習慣の改善です。普段から体重計に乗って自分の体重をモニターする習慣を身につけ、標準体重やメタボ健診の基準(BMI:25未満、腹囲:男性85cm未満・女性90cm未満)を超えないように気をつけましょう。メタボ健診や健康診断を定期的に受けることも重要です。メタボリック症候群やその予備軍と言われた人は、特定保健指導をぜひ利用してください。日々の食生活では、糖質・脂質を取りすぎないことが大切です。果物や清涼飲料水など果糖を多く含む食品、ご飯・パン・麺類などの炭水化物を控えめに、また、飽和脂肪酸を多く含む動物性の油、リノール酸を多く含む油(紅花油・コーン油など)、トランス脂肪酸を含むマーガリンやショートニングの取りすぎに注意しましょう。逆に、多価不飽和脂肪酸を多く含む青魚やビタミンEを含むナッツ類・植物性オイルなどは、積極的に摂取すると良いと言われています。運動も大切です。運動することで肝臓にたまった脂肪を消費するほか、筋肉を使うことで肝臓の働きを助けます。有酸素運動が有効であり、おすすめは毎日20〜30分のウォーキングです。少し汗ばむ程度の早足を心掛けてみてください。さらに、スクワットなどの筋トレ(レジスタンス運動)を取り入れると、より効果的です。簡単な運動でも効果は期待できますので、毎日続けて習慣化することを目指しましょう。主な肝臓の働きマッスルディーマッシュ代謝たんぱく質や脂質などを体内で利用されやすいように分解・合成。貯蔵余分な糖分をエネルギーとして貯蔵。必要に応じて血液中に送り出す。解毒アルコールや薬物、アンモニアなどを分解処理して無毒化。合成コレステロール・中性脂肪の合成や、胆汁を作る。標準体重とBMIの計算方法標準体重=〔身長(m)身長(m)22〕kgBMI=体重(kg)〔身長(m)2〕体重を増やさない食習慣3カ条❶朝食や昼食を抜かず、1日3食きちんと食べる。❷高カロリーになりがちな外食の際は、揚げもの、炒めものを控える。❸就寝前の2時間は食べない。WellTOKK2024Winter|07